写真:住宅

玄関前のひさしや、窓の上に突き出た軒(のき)は、建物の中で意外と重要な役割を果たしているのをご存知でしょうか。
軒は雨に濡れることなく鍵を開けたり、夏の強い日差しをさえぎったりして、私達が快適な生活が送れるように、サポートしてくれています。

軒裏天井は、面積的にはそれほど広くありませんが、建物で大切な部分なので、定期的に点検し補修や塗装をする必要があります。
メンテナンスをしないで軒裏天井の傷みを放置していると、板が外れてそこから害獣が入るなど、さまざまな悪影響が建物に及ぶかもしれません。

今回は、軒裏天井をどのようにしてメンテナンスするのか、その補修と塗装について説明します。

目次

軒裏天井の塗装とは?

軒天塗装(のきてんとそう)とは、あまり耳慣れない言葉ですよね。
軒裏天井(軒天)とは何か、軒天塗装とはどのようなものかについて、まず理解しましょう。

軒裏天井とは?

軒裏天井は、屋根が外壁から突き出している部分の裏側のことを指します。
傾斜した屋根の下側の端を「軒先」と呼び、その「軒」の裏側にあたるために、「軒裏天井」「軒天井」「軒天」などと呼ばれています。

ベランダやバルコニーの、外壁から突き出した部分の裏側も軒天と呼ばれています。
ちなみに、最近では、シンプルな箱型の設計で、軒裏天井のない家も多くあります。

軒天塗装について

軒天は、破風板(はふいた)、雨樋(あまどい)などと同様に、建物の付帯部分に分類され、外壁や屋根の塗装とは分けて費用が見積もられます。
軒天の塗装費用は面積で計算し、軒の長さとその幅によって、塗装面積や費用が異なってきます

軒天塗装には足場が必要なため、外壁塗装と一緒にするのがオススメです。
外壁塗装の際に、軒裏天井の塗装忘れがないよう、見積書に「軒天塗装」の項目が載っているか確認しましょう

軒裏天井の役割とは

軒裏天井は、住宅の構造の中であまり意識されていない部分です。
しかし、建物の構造上、重要な役割を果たしています。

屋根の裏側を隠す役割

屋根は通常三角の形に垂木(たるき)と呼ばれる木材を組み、その上に野地板(のじいた)と呼ばれる板をしいて、瓦などの屋根材を乗せます。
軒を作るために、外壁より屋根が出っ張ると、軒下の裏側から、垂木や野地板が見えてしまいます。

そこで、軒下に板を張ることで、屋根の裏側構造を目隠しすることができ美観がよくなります。
中にはデザイン性を高めるため、美しい木材で化粧垂木(けしょうたるき)を施した、おしゃれな軒天もあります。

外壁を雨水や紫外線から守る役割

軒天は、外壁を雨水や紫外線から守る役割を果たしています。
軒が長いほど、雨水の吹き込みや直射日光の差し込みをさえぎることができるでしょう。
また、軒が長くて外壁が紫外線や風雨にさらされないほど、塗装の劣化が少なく外壁材が長持ちします。

さらに、猛暑が厳しい近年では、太陽光の差し込みを減らし室内の温度を下げるのに役立ちます。

火事の際に延焼から外壁を守る役割

軒天に燃えにくい素材を使うことで、火事の時に窓からの火の手が建物全体に広がるのを防ぎ、火の回りを抑えてくれます
また、周囲で火災が起きたときも、火の粉が外壁に当たるのを防ぎ延焼のリスクを減らします。

昔は、軒天の不燃材にアスベストが使用されていましたが、今ではアスベストを含まない素材が使われています。
しかし、築年数の古い住宅の軒下にはアスベスト材が残っていることがあるため、ボロボロになって飛散しないよう、早めに張り替えるか塗装によりメンテナンスしてください。

屋根裏の換気の役割

マンションの最上階の部屋は、夏場に熱がこもって非常に暑くなります。
一方で、屋根裏のある住宅では、熱の伝わりを緩和することができます。
これは、屋根裏にできた空間が、室内と外気の温度差を調整してくれるからです。

ところが、温度差により結露が発生し、水が溜まって屋根材を傷めることもあります。
そこで、軒天に換気口をつけたり、穴の開いた有孔ボードを使ったりして、結露となった水分や湿気を外に出す工夫が重要です

軒天に使われる建材

軒天にはさまざまな素材が使われており、素材によって塗装や修理の方法が異なります。
ここからは、軒天の素材ごとの特徴をみていきましょう。

ベニヤ板(木材)

一般に「カラーベニヤ」と呼ばれるベニヤ板は、値段が安く古くから住宅の軒下の素材としてよく使われてきました。

ベニヤ板は薄い一枚の板で、湿気を含むと変形しやすく、台風の強風などではがれやすい素材です。
板が外れて穴のあいたところから鳥や動物が侵入しやすいため、外壁塗装の際にしっかりとメンテナンスする必要があります。

ベニヤ合板(木材)

軒天の素材が木材の場合は、ベニヤ板よりベニヤ合板の方が耐久性に優れています。
しかし、ベニヤ合板も劣化しやすい素材なのでメンテナンスが重要です

ベニヤ合板は、ベニヤ板を数枚重ねてプレスしたもので、表面にヒノキの木目模様を張り合わせたものは「化粧板」と呼ばれています。
「化粧板」はベニヤ板よりも耐久性がありますが、木材であるため塗装による防水が必須で、ひどく傷んでいる場合は張り替えなければなりません。

ケイカル板(不燃素材)

ケイカル板の正式名は「ケイ酸カルシウム板」といい、セメントやセラミックスを原料とする、耐火性に優れた不燃ボードです。
耐水性・防湿性に優れていて腐食しにくく、反りや変形が起きにくいため軒天に広く使われています。

近年は軒天の他にも、洗面所や台所などの内装にも使われている、使用頻度の高い建材です。
昔はアスベストが混ぜられていましたが、近年は不使用であるため、健康被害の心配もなく、値段もベニヤ合板と同じくらいの安い価格帯です。

スグラ石膏版(不燃素材)

スラグ石膏版は、「エクセルボード」とも呼ばれている不燃材で、石膏にスラグと呼ばれる鉱物を混ぜて作られています。
防火性・耐火性・断熱性に優れた素材で、加工しやすいため、軒天の他にも建物のさまざまな用途に使われています。

価格はケイカル板よりやや高めです。

フレキシブルボード(不燃素材)

フレキシブルボードは、「スレート」「繊維強化セメント」とも呼ばれており、セメントに補強繊維を入れて加工した不燃素材です。
衝撃や湿気に強い建材ですが、素材が重たいため、定期的に落下の危険がないか確認してください。

不燃素材の価格帯では、ケイカル板、スラグ石膏版、フレキシブルボードの順に高くなっています。

ガルバリウム鋼板(金属系素材)

ガルバリウム鋼板の正式名は、「アルミニウム・亜鉛合金めっき鋼板」という金属板です。
耐久性に優れたメッキ鋼板で、屋根や外壁ボードに使われています。

近年では、表面に加工を施したおしゃれな鋼板もあり、価格は高めですが人気の建材です。
耐火性に優れ、耐用年数も長く、塗装頻度は少なくて済みます
しかし、いずれはメッキも剥がれてくるため、長持ちさせるのには10~15年で錆止め塗装をしてください

軒天(のきてん)塗装

写真:軒天

軒天は、雨水が直接当たらないため、劣化しにくいと思われがちです。
しかし実は、軒下に湿気がたまりやすく、腐食しやすい箇所です。

軒天塗装の重要性

軒裏天井は、塗装でしっかりとした塗膜を作って保護しなければ、劣化により板がはがれて穴があいたり、軒天材が落下したりする危険性があります。

また、板がはがれて穴の開いた部分から、鳥や野生動物が浸入して、屋根裏に巣を作ることがあります。
有害動物として近年問題になっているハクビシン等が住みつき、糞尿で天井材が腐食したり、配線を噛み切られて漏電したりすることもあります

そこで、外壁塗装の際に、軒天の補修と塗装をしっかりと行うことで、これらの問題を回避することができます。

軒天塗装のタイミング

軒天は太陽光線を直接浴びることはなくても、コンクリートの照り返しなどで塗装塗膜が劣化して、チョーキング現象がおきます。
チョーキング現象とは、板の表面を触ると、手にチョークのような白い粉がつく症状です。
チョーキングは、塗料に含まれる樹脂が劣化して無くなったため、紫外線で塗料の顔料が分解されて、粉となって表面に浮き出てきている状態です。

チョーキングがおきている場合は、塗装が劣化して防水機能が低下している証拠なので、すぐに塗装する必要があります
また、化粧合板の表面のプリントシートが剥がれている場合や、コケ・藻・カビが生えている場合も、劣化している証拠です

軒天塗装の手順

外壁塗装の場合、通常は高圧洗浄機で汚れを落とします。
しかし、軒天は水に弱い素材もあるため、スクレーパーやサンドペーパーを使った手作業で汚れを落とすことが多いです。

洗浄後は、釘などで錆びた部分に錆止めを塗り、軒天材の継ぎ目や釘穴をパテ埋めて、塗装表面の下地処理をします。
その後、下地剤のシーラーをローラーやハケで塗り、乾燥時間をおいて、中塗り、上塗りと作業を進めます。

軒天塗装の塗料

軒天は、直接風雨にさらされないため、耐用年数の比較的短いアクリル樹脂塗料もよく使われます。
日本ペイントのケンエースG-Ⅱは、素材への浸透力があり、防かび・ヤニ止め・シミ止め効果、耐水性にも優れ、アクリル樹脂でも長持ちする塗料です。

また、塗料の色に白を使うと、光の反射で住宅全体を明るく感じさせてくれます。

EP/AEP塗料

軒天塗装の見積もりで、「EP塗り」や「AEP塗り」の表現を目にすることがあるかもしれません。
EPはエマルジョンペイント、AEPというのはアクリル・エマルジョンペイントのことです。

エマルジョンは「乳化」という意味で、本来は混ざらない油と水が均一に液体のなかに分散しているドレッシングのような状態です。
EPは一般に「水性エマルジョンペイント」を意味し、AEPは、樹脂成分にアクリル樹脂を使用したものです。
EPやAEPは水溶性で塗りやすく、雨や紫外線にさらされない室内塗装に使用され、軒天にもよく使われる塗料です。

軒天の経年劣化と補修工事

軒天は、突き出した屋根の裏側ですが、実際に住んでいると、色あせや汚れが目立ちやすい箇所です。

軒天の経年劣化

軒天は直接風雨にはさらされませんが、建物が老朽化してくると、強風による粉塵で傷み、雨水の影響を受けてはがれ落ちる被害が出ます。
老朽化を加速する1番の原因として考えられるのが、表面の塗装塗膜の劣化です。

軒天の経年劣化を放置すると、垂木や野地板、破風板などの建物の構造部にまで被害が広がることになります。

軒天の補修工事

軒天の補修工事には、「増張り補修」と「張り替え」があります。

増張り補修

「増張り」とは、古くなった軒天を、新しい建材ですっぽりとカバーする補修工事です。
既存の軒天板を剥がす手間や、取り外した古い素材の廃棄費用がかかりません
そのため、工事費が安く短期間で作業できます

軒天全体が老朽化している場合は、外壁塗装で足場を組んだときに、同時に工事をしてもらうのが賢明です。

張り替え

軒天が雨漏りで腐食している場合は、上に新しい板を張っても、カビが繁殖して新規の軒天材まで腐食してしまいます。
その場合は、腐食した軒天の板や下地の木材を取り除き、新しい軒天に張り替えます。

張り替え後に軒天全体を塗装すると、古い素材との色の違いもあまり目立たなくなります

軒裏天井で見つかる屋根の雨漏り

軒天の塗り替え時に、軒天に黒ずんだ雨染みが見つかる場合は、屋根で雨漏りが発生している可能性があります。

屋根からの雨漏り

通常は、屋根の雨漏りは、天井裏に水が溜まって室内に落ちてきます。
しかし、雨水が屋根の下地の野地板や垂木を伝って、軒まで流れてくることもあります。

軒天に黒ずんだ雨染みがある場合は、塗装工事に入る前に、屋根で雨漏りが発生していないか、屋根裏の木材が腐っていないかを調べる必要があります
実は、軒天は屋根からの雨漏りや建物の老朽化を知る上で重要なサインとなる箇所で、雨漏りの大切なチェックポイントでもあります。

見積もりの際の下見調査の重要性

塗装の段階で、軒天のシミや汚れから雨漏りが見つかったり、軒天板の腐食で張り替えが必要になったりした場合は、塗装工事が止まってしまいます
塗料は劣化した建材に塗装しても、すぐにまた剥がれてくるため、修理をしてから塗装する必要があるからです。

そのため、見積もり依頼の段階で、外壁の下見を十分にしてもらい、特に軒天の傷み具合のチェックまでしてもらうことが大切です。

外壁塗装をご検討中ならニシムラ塗装が力になります

軒天の塗装は、住宅を守るうえで重要な役割を果たします。
小さな部品なのでおろそかにされがちですが、しっかりと定期的にメンテナンスしなければなりません。
軒裏天井を長持ちさせるには、定期的な塗装が必要なので、外壁塗装の際に忘れずに軒天も塗装してください

もし、外壁塗装をご検討中なら、一度私たちニシムラ塗装にご相談ください。
お客様満足度93.8%を誇る私たちなら、細部まで質の高い外壁塗装をご提供することができます。
もちろん、軒天を含めた細部までしっかりとチェックし、必要なメンテナンスをご説明いたしますので、お気軽にお問合せください。