地震の少ないヨーロッパでは、レンガ造りの家が多く、レンガの風情ある外壁に憧れる人も多いのではないでしょうか。
しかし、レンガは手作業で積み上げるため施工費が高くなってしまいます。
また、日本は地震が多いため、レンガ造りの住宅は非常に少ないのが現状です。
そこで、日本では最近、本物と見間違えるような、おしゃれなレンガ調「サイディング」が人気です。
また、「ブリックタイル」と言って、レンガのような模様のタイルを使った外壁もあります。
ここでは、レンガの特徴や、人気のレンガ調建材のメンテナンスに必要な知識や外壁塗装について説明します。
目次
レンガ造りの外壁
本物のレンガ造りの建物は、近年あまり見かけなくなりましたが、レンガとはどのよう建材なのでしょうか。
レンガの歴史
レンガは、粘土や泥を型に入れて、窯で焼いたり圧縮したりして作られます。
中国の「万里の長城」に見られるように、歴史的建造物が多くあります。
乾燥させた日干しレンガが、既にエジプトのメソポタミア文明(紀元前4000年)で使われていました。
古代ローマ時代には、製造者の刻印を押すことが義務づけられたことで、品質の高いレンガが作られるようになり、中世には多くの寺院が造られました。
近代に入り、蒸気機械を使った焼成技術で大量生産されるようになり、日本でも、明治にレンガ建築が広がりました。
しかし、関東大震災で甚大な被害を受けた後、建物の基礎部の建材として使われることは減少しました。
現在では、レンガの風合いを出したレンガ調の外壁建材が、住宅の壁に広く使われています。
日本のレンガ造りの外壁
日本の代表的なレンガ造りの建物には、1914年に建てられた鉄骨レンガ造の東京駅があります。
東京丸の内の駅舎は、1923年の関東大震災の被害もなく、大規模修繕が施され2003年には国の重要文化財に指定されています。
レンガの原料は、粘土や長石類などの自然素材が使われ、「耐熱性」「保温性」「断熱性」「耐水性」に優れています。
そのため、レンガは外壁の他に、ピザ窯に見られるような「炉」に使われる「耐火レンガ」や、歩道に使われる「敷レンガ」などが製造されています。
レンガの外壁では「フランス積み」「イギリス積み」「長手積み」「小口積み」などの積み方があり、積み方によっての印象や強度が異なってきます。
積み方による強度の違いと日本のレンガ造りの建造物
直方体のレンガの長細い面を「長手」、小さい面を「小口」と呼びます。
どの積み方も、強度確保のため、目地が縦一直線にならないようズラして積みます。
「フランス積み」は、長手と小口を交互に並べる積み方です。
強度があり、日本の代表的建物には「富岡製糸場」があります。
「イギリス積み」は、長手だけの段と小口だけの段を交互に積み上げる方法です。
こちらも強度が高く、広島の「原爆ドーム」に見られます。
「長手積み」は、長手だけを使って積む方法です。
強度は劣りますが個数が少なくてすみ、横浜の開港記念会館などで採用されています。
「小口積み」は「ドイツ積み」とも呼ばれ、小口だけを使った積み方です。
辰野金吾により、東京駅舎にも採用されています。
レンガの外壁メンテナンス
このように、日本にも、多くの美しいレンガ建造物が残っています。
レンガは紫外線や、雨風から来る飛来物の傷に強く、カビが生えにくいため、汚れや色斑が起きにくい建材です。
レンガ造りの外壁は、積上げる時にモルタルで固められるため堅牢な壁を作ります。
レンガの壁は、メンテナンスの必要がほとんどなく、塗装するとレンガ本来の風合いが失われてしまうため、外壁塗装は施しません。
紫外線による劣化がないうえ、時の経過とともに渋みや暖かみが出て、レンガ特有の趣が味わえます。
本物のレンガでできた壁は、手で触るとざらざらとした固い感触があり、一つ一つのレンガの形が異なっているのが特徴です。
レンガ調のタイルでできた外壁
レンガの壁は、レトロな雰囲気と洋風のおしゃれな風合いが人気で、レンガを模した建材が多く作られています。
その一つに、タイルをレンガ風に焼き上げた「ブリックタイル」などがあり、シンプルで綺麗な印象の壁を作ります。
レンガ調タイル(ブリックタイル)
ブリックタイルは、セメントに軽量骨材を混ぜて、レンガや天然石などの形に作られ、軽量で施工しやすい建材です。
セメント系ブリックタイルには、アンティークなレンガ調や、ゴツゴツした石材調があり、インテリアや外壁に使用されています。
ブリックタイルにはさまざまな種類があり、軽くて施工性がよいためDIYでも人気です。
ブリックタイルは、飲食店などの店舗やマンションの外壁の一部に使われ、建物を高級感あるエントランスに仕上げます。
レンガのような質感を持たせ、非常にリアルに作られたものもあり、一見観ただけでは、本物のレンガと区別がつかないこともあります。
レンガ調タイルの外壁メンテナンス
一般に、日本の住宅の外壁材には、モルタル、サイディング、ALC、タイルがあり、タイルの壁には外壁塗装の必要がありません。
タイルは陶製の焼き物で、屋根瓦と同様に無機物でできているため、紫外線による劣化が起きません。
表面汚れも落としやすく、耐久性に優れており、施工費はかかりますが、長期的に見ればメンテナンスフリーのメリットがあります。
レンガ調タイルの壁は、一般的に触ってみると、表面に凹凸が少なく滑らかで、個々のレンガの形が均一なのが特徴です。
近年、建材レベルが上がってきているため、レンガ風の外壁が、タイルか、レンガ調サイディングかを見分けるのは非常に難しくなってきています。
しかし、サイディングとタイルの価格を比較すると、タイルは非常に高額です。
そのため、全面タイル貼りの建売住宅は、まず存在しないと言えます。
また、レンガ造りの壁と同様に施工費がかかるため、外壁全体がタイルでできていることはまれです。
これらのことから、ほとんどの建物でタイル以外のモルタルの外壁部分に、外壁塗装が必要となります。
レンガ調サイディングの外壁塗装
レンガやタイルは施工費が高くつくため、近年の住宅のレンガ調外壁の多くはサイディングです。
それでは、サイディングとはどのような建材でしょうか。
外壁の種類とサイディング
外壁の施工方法には「湿式(しっしき)」と「乾式(かんしき)」というものがあります。
「湿式」はタイル張りやモルタルなどの塗り壁で、「乾式」がサイディングです。
レンガやタイルの価格が高いこと、また、施工する左官職人が減ったこともあり、建売住宅の壁の主流はサイディング工法になっています。
サイディングは、外壁用の板の建材(サイディングボード)のことで、工場で生産され、現地で壁に張り合わせられます。
サイディングの壁板の種類には、窯業(ようぎょう)系・樹脂系・木質系・金属系などがあります。
窯業系サイディング
窯業系サイディングは、セメントに繊維質を混ぜ、窯(かま)で高熱処理して工場生産される「外壁パネル」です。
色やデザインが豊富で、価格が比較的安く、軽くて施工しやすい上、耐震性・耐火性に優れており、日本の一般住宅の外壁として広く普及しています。
壁面に広さに合わせてサイディングボードをカットし、壁に貼り合わせ、つなぎ目をシーリング材で埋めて防水処理します。
レンガ調サイディングも人気で、素人目では、サイディングかタイルか見分けにくいほど精巧に作られています。
一般に、レンガ調サイディングは、触った時の感触に、レンガのような乾燥した感覚や、タイルのような硬質感がなく、目地の溝が浅いのが特徴です。
窯業系サイディングのメンテナンス
窯業系サイディングは、原料に繊維質の素材が使われるため、レンガやタイルとは異なり撥水性が悪く、水に弱い性質があります。
表面は工場で塗装処理されていますが、長期にわたり直射日光にさらされると、表面の塗装塗膜が劣化します。
外壁塗料にはアクリル・ウレタン・シリコン・フッ素などの合成樹脂塗料が使われますが、耐用年数は樹脂の品質によって異なります。
樹脂の耐久性が高いほど、塗料の値段は高くなりますが、紫外線による劣化を遅らせ、塗装サイクルは長くなります。
一般に、アクリル樹脂よりもウレタン樹脂が、ウレタンよりもシリコンやフッ素でできた樹脂塗料の方が、耐久性があり長持ちします。
ちなみに、アクリルは耐用年数が短いので、現在の住宅の外壁塗装にはほとんど使われていません。
窯業系サイディングの外壁塗装の目安
一般的な窯業系サイディングの耐久年数は、7~10年ほどと言われています。
チョーキング現象などがあれば、耐用年数前でも外壁塗装が必要です。
チョーキング現象とは、外壁を手で触ってチョークのような粉がつく症状で、外壁の塗り替え時期の目安となります。
これは、塗装塗膜が失われ、樹脂が紫外線にさらされて分解し、塗料の中の顔料が粉末に戻るために起こり、茶色の壁では茶色の粉が手につきます。
レンガ調サイディングの場合も、表面を覆っている樹脂塗料に劣化が起きるため、定期的な塗装が必要です。
放置していると、ボードが雨水や湿気を吸い、板がそってきて端からめくれるようにはがれてくることもあります。
塗料の耐用年数は、塗装の仕方や天候などにも左右されるため、日頃からの外壁の劣化チェックが必要です。
窯業系サイディングのコーキング補修
窯業系サイディングのメンテナンスで、特に注意が必要なのは、ボードのつなぎ目に施されている「シーリング材の補修」です。
シーリング剤もゴム系樹脂でできているため、紫外線による劣化が早く、シーリング材が痩せたり、ヒビ割れを起こしたりします。
ボード自体は丈夫でも、シーリングが劣化して剥がれたところから雨水が侵入し、外壁内部を腐らせてしまいます。
外壁塗装では、シーリングのことをコーキングと呼ぶことが多く、塗装時に、コーキングの「充填」や「打ち替え」の作業が必要です。
レンガ調サイディングの外壁塗装の場合も、パネルのつなぎ目の、コーキング補修を忘れずに行いましょう。
レンガ調サイディングの外壁塗料
レンガ調サイディングの場合、カラーペイントで塗装すると、レンガの風合いが失われてしまいます。
そのため、レンガ調サイディングでは、透明な樹脂でできた「クリア塗料」を使います。
クリア塗装は色がついておらず無色透明であるため、レンガ調の外観をそのままに残しながら、外壁材を保護することができます。
しかし、顔料が含まれていないので、目にみえるようなチョーキング現象が起きないため、塗料の劣化に気付きにくい点があります。
無機塗料でない限り、樹脂でできた塗料は、耐用年数の違いはあっても必ず劣化するため、クリア塗料でも定期的に外壁塗装をしましょう。
クリア塗装の注意点
クリア塗装は、今あるサイディングの模様を、そのまま残して塗装したいという要望から生まれた塗料です。
着色の役割を持つ顔料(色の素)が含まれていないため、チョーキングが発生しません。
ただ、クリア塗装が劣化してくると塗装面が白く濁ってくるので、劣化の目安にしてください。
クリア塗装に使われる合成樹脂には、色付きの塗料と同様に、ウレタン・シリコン・フッ素樹脂があり、水性と油性タイプがあります。
耐用年数は通常の塗料と同様に、合成樹脂の品質や水性・油性によって決まり、価格も品質に比例して高くなります。
また、クリア塗料は、壁の下地塗料が劣化している場合は、その上から重ねて塗ることができないため、状態が悪くなる前に塗装する必要があります。
クリア塗装では、汚れやシミがあると、そのまま透明樹脂でカバーすることになるため、塗装前の洗浄をしっかりするのがポイントです。
また、サイディングの素材によっては、クリア塗料をはじいて、塗装できないものもあります。
そのため、レンガ調サイディングに詳しい、外壁塗装業者に相談することをお勧めします。
レンガ調サイディングの塗装もニシムラ塗装にお任せください
地震に弱いこと、建築費用が高くつくことなどから、現在レンガ造りの建物は少なくなっています。
オタクの外壁がレンガのような見た目なら、レンガ調のタイルやサイディングであるケースがほとんどでしょう。
レンガ調サイディングは非常によくできていて、本物のレンガのような見た目を楽しめますが、サイディングには外壁塗装が必要です。
下地が劣化していると上からクリア塗料が塗装できないため、早めに塗装しましょう。
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